要介護高齢者や体の不自由な人など介護を必要とする人が利用しやすいように、車椅子やストレッチャーでそのまま乗車できるように工夫された特別仕様の車両を使用してタクシーサービスを提供する。 送迎だけでなく、介護サービスも提供する場合は、運転手が介護福祉士などの介護関連の資格を取得しているか、介護職員初任者研修を受講していることが必要である。 仕事を1日の流れの例でみると、朝、事務所に出社して朝礼に参加し、その日の業務の確認を行う。その後、予約にしたがって利用者宅を訪問、利用者をタクシーに乗せて目的地へ移動する。要望があれば介護を行う家族も同乗する。目的地での介護など予定された業務を終えたら利用者宅へ送り届け、事務所へ戻る。その後も予約にしたがって、同様の業務を繰り返す。予約の業務がすべて終了したら、事務所で報告書の作成などの事務処理を済ませて帰宅、という流れになる。 介護タクシーは介護や介助が必要な高齢者や身障者を利用対象者とするもので、運転手が介護関連の資格を取得していて、介護保険を使った身体介護サービスを提供できる介護保険タクシーと、介護保険が利用できず全額自己負担となる介護タクシーがある。介護保険を利用しない介護タクシーは個人事業主でも運行できるが、介護保険を利用できる介護保険タクシーを運行するには、法人化して訪問介護事業所の指定を受けることが条件となる。 介護保険の介護タクシーは、利用にあたって、病院への通院には利用できても入退院時には利用できない、買い物は1時間未満など制限があるが、介護保険が適用されるため利用者は、1割負担(10分の1の料金)で利用できる。最近は、介護保険の適用がなく一般料金を支払っても、付き添いが同乗して、公共交通機関を乗り継ぐのがむずかしい利用者が買い物や観光などに利用することも多く、利用範囲は広がっている。 類似のサービスの福祉タクシーは、身障者の外出を支援するタクシーで、介護保険は利用できないが、身体障害者手帳をもっていて車椅子を常用している障害者などを対象に市町村が料金の一部を負担する制度が利用できる。この補助制度は、身障者でない高齢者は利用対象外となるため、高齢者向けにシルバータクシーなどの補助制度を別途に設けている自治体もある。 また、ヘルパータクシー(自家用有償輸送)は、訪問介護事業所に勤務するヘルパーなどが自分の所有する自家用車(白ナンバー)で訪問介護利用者を有償で輸送するサービスのことで、訪問介護事業所の指定を受け、介護タクシー許可も取得している事業所が取得できる。
◇ よく使う道具、機材、情報技術等 車椅子、ストレッチャー、普通自動車(介護タクシー:普通免許(第二種)で運転可能なもの)
入職にあたって必須の資格には、普通自動車二種免許がある。ただし、これだけではタクシーの乗降介助や利用者の身体介助を行うことができない。送迎だけでなく、介護サービスも提供する場合は、介護職員初任者研修等を受講しているか、介護福祉士などの介護関連の資格を取得していることが必要である。 新卒で入職するケースはほとんどない。介護タクシー会社に転職するか、自営として起業するケースが多い。 介護タクシー事業は事業用車両1台の個人事業主としても、法人としても開業できる。一般常用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の開業認可を受けるための基本的な流れとしては、まず車両や事務所、開業資金が用意できるなどの基本要件を満たした上で、地元の運輸支局へ事業登録申請を行う。この際の必須となる所有免許は普通自動車第二種免許である。審査に通ったら、地方運輸局で法令試験と事情聴取を受け、事業認可が下りたら、車両の検査・登録、必要であれば緑ナンバーへの変更などを行い、許可認可から6カ月以内に開業することになる。 一般のタクシー会社に勤務する場合は、普段は通常のタクシーを運転していて、予約があったときに介護タクシーを運転するケースがほとんどである。 自営業者の場合は、病院などの医療機関や行政との提携、予約の集中への対応などで事業者間の横の連携が不可欠なため、地域の同業者間のネットワークを築くことも必要である。 コミュニケーション能力、突発的な事態に対応できる能力、相手を気遣うホスピタリティ、利用者の尊厳を重んじる気持ちが求められる。